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【さて今回は金融機関の担当者が異動した場合について】
中小企業の経営者にとって、金融機関の担当者は資金繰りや融資の相談に欠かせない存在です。しかし、金融機関では数年ごとに担当者が異動するのが一般的。せっかく築いた信頼関係が途切れてしまうと、「また一から説明し直さなければならない」「融資がスムーズに進むか不安」と感じる方も多いのではないでしょうか。今回は、担当者が異動しても安定した関係を維持できるように、経営者ができる備えを整理しました。
1.恒常的に支店内に2つ以上のパイプを持つ
金融機関との関係を担当者一人に依存していると、異動のたびに説明や信頼の築き直しが必要になります。安定した取引を続けるには、支店内に2つ以上のパイプを持つことが大切です。支店長や貸付担当役席、渉外担当役席など、複数の役職員と日ごろから接点を持ちましょう。たとえば、月次報告を支店長にも一言添えて渡す、担当者との面談時に渉外担当を紹介してもらう、決算や年末にお礼や近況を支店に伝えるといった工夫です。こうした積み重ねで支店全体に自社への理解が広がれば、「情報提供に積極的な会社」と認識され、担当が替わっても関係は途切れにくくなります。
2.新任者に自社の「事業計画書」を渡す
新任の担当者や支店長は、着任直後には企業の詳細を把握していないことが多く、とくに「重要取引先」と見なされない場合、引き継ぎ内容はごく限られます。そこで有効なのが、自社の「事業計画書」を初対面の場で渡すことです。事業内容や今後の展望を簡潔にまとめた資料を提示すれば、「この会社をもっと理解しよう」と関心を持ってもらえます。また「自分のために準備してくれた」と受け止められ、信頼関係の早期構築にもつながります。
3.金融機関に対し積極的に情報提供を行う
金融機関では「顧客の情報量と融資の可能性は比例する」と考えられています。担当者は多忙で十分に情報を集められないため、事業者から積極的に情報を届ける姿勢が信頼につながります。具体的には、「毎月の試算表や事業報告を支店に持参し、担当者だけでなく貸付担当役席や支店長にも共有する」、「会社案内や製品資料を渡して事業を説明する」、「工場や店舗を案内する」などです。さらに今後の資金需要や経営課題も伝えれば、支店内で「前向きに支援したい企業」と評価され、融資だけでなく長期的な関係強化にもつながります。
4.新任者に替わったタイミングこそ関係を深めるチャンス
担当者の交代を「関係のリセット」と受け止める経営者は少なくありませんが、実は新しい担当者と関係を築く絶好の機会です。新任者は前任者から最低限の引き継ぎしか受けていないことが多く、企業の状況を手探りで把握しようとしています。そこで経営者の側から融資履歴やこれまでの相談経緯を整理して伝えれば、安心して引き継げるだけでなく、企業への関心も高まります。さらに、支店長や貸付担当役席との面談も並行して行うことで、支店全体での理解が進み、特定の担当者に依存しない関係が築けます。交代のタイミングは、むしろ関係を整理し直し、深めるチャンスなのです。
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